この記事のもくじ
ベストエフォート型サービスってどういう意味?
ベストエフォート型とは、インターネットなどの通信サービスにおいて、サービスの品質の保証がない通信ネットワークやサービスの方式のことを言います。
つまり、サービス性能や品質に関して明示的な保証をせずに、最善(ベスト)の努力(エフォート)でサービスを提供するという形態という意味になります。
・本来「嘘偽りのない表示」だった回線速度
インターネットは当初、大学などの研究機関や、IT系(当時はまだITという言葉はありませんでしたが)の企業間を接続するものでした。
つまり「理系の巣窟」を結んでいたのです。
このため利用者は皆数字にうるさく、「公表した値通りの性能が出なかったら許さんぞ」というノリで臨んでいたのです。
しかし、常にカタログ値通りの最高速度を保証するということは、非常に多額のコストを要求するものでもありました。
結果的にインターネットそのものが「高くつく」ものとなり、一般庶民にとって手を出しにくいものとなってしまっていたのです。
このため、言い方は悪いですが設計をいい加減で場当たり式に改めることにより、コストの引き下げが行われることになります。
このコスト引き下げ方式の理屈は、こんな感じです。
ある所に10の研究所と最大速度10Mbps速度で接続する回線を管理するプロバイダがあったとします。
このプロバイダが、接続先すべてに10Mbpsの速度を完全保証させようとした場合、インターネットの上流、俗に言うバックボーンとの接続には100Mbps以上の回線を使用しなければなりません。
ですが、接続した研究所のすべてが、常時10Mbpsの最大速度でインターネットに接続しているわけではありません。
10Mbpsで接続しているところが一箇所で、他は全部お休みの場合は、バックボーンも10Mbpsで十分なのです。
最終的にどれぐらいの回線がバックボーン接続に必要なのかどうかは、ユーザーの利用状況によってリアルタイムで変化します。計算して最適値を求めることは困難です。
このため業者としては「まあ、こんなもんだろう」と検討をつけ、渋滞が発生したら増強する、という形でなんとかするようになりました。
場当たり式でいい加減、というのはこういうやり方を差して言ったことですが、じゃあ場当たり式でいい加減ではない対策ってあるの?と聞かれると、「ない」と答える他はありません。
・ベストエフォートという言葉を定着させたADSL
「ベストエフォート式接続」というのは、初期の光回線でも使われていた言葉です。
ただ、一般に「ベストエフォート」という言葉を定着させたのは、何と言ってもADSL回線でしょう。
ADSLは、人間様の声の通信用に作られた電話回線に、コウモリでも聞いたら失神するような高周波の音を無理やり流して、高速通信を可能にするというかなり乱暴な発想に基いています。
無茶をすると必ず反動が来るものですが、ADSLの場合、高速度を貰った代償として、「安定性」を失うことになりました。
電話局と加入者宅との間が数キロ離れると、みるみる速度が低下しますし、距離的に十分近くであっても、途中にノイズ発生源があると速度低下が起こるのです。
特にISDNの回線と相性が悪く、隣でISDNを導入している集合住宅の一室などにおいては、使い物にならないほどの速度低下が生じた、などということもあります。
この状態では、回線業者側では「安定してこれこれ出せます」とはとても言えません。「運がよければこれぐらい出ることもあるかもしれませんよ」というのが精一杯になるのです。
ベストエフォートというのは、つまりこういう状態を指していう言葉なのです。
・サービス宣伝で”最大”とついている理由
日本人は几帳面であるせいか、数字を重視するきらいがあります。インターネットへの接続など、「速度」が快適さに大きく影響するジャンルについては、その快適さを数字で表現してもらわないと納得しません。
このため、回線業者としては、主に商業的な理由から「速度」を数値で設定することになります。
この場合、実測値平均ということで数字を出すことも可能ですが、実際には「理論上の最高速度」が選ばれることになりました。
「理論上の最高速度」の方が実測値平均よりも数字が大きく、消費者に喜ばれやすいのと、実測値を提示した場合、それ以下しか出なかった利用者からのクレームが激しくなることが予想されたためです。
「だいたいこれぐらい出るはずです」と言われてその数字にならなかった場合と、「理論的にはこれぐらい出ることもあるかも知れません」という盛った数字を出されてそのとおりにならなかった場合を比べると、どういうわけか消費者の怒りは後者の方が小さかったのです。
・どのぐらいが「快調時の速度」なのか
画像引用:http://support.tp1.jp/config/basic01b.html
ベストエフォート型の「最高速度」は理論値であり、回線業者も(中には例外がいるかも知れませんが)「出るわきゃないだろ」と割り切った数字です。
では実際は、どの程度出ているのでしょう。
実はこれは、回線の形式によって状況が微妙に異なってきます。
有線であり、なおかつデータ通信専用に設計された回線の場合、かなりベストエフォート値に近い数字が出ます。具体的に言うと、光回線が一番理想に近い回線です。
次に有利なのは同軸ケーブルを利用したケーブルテレビ接続ですが、こちらの場合は業者側のネットワーク機器が貧弱であることが多く、これが足を引っ張って理論値よりもかなり低い速度になりがちです。
有線系で最もベストエフォート値から遠くなる傾向があるのは、本来データ通信用ではない通信線を、無理やりデータ通信に使っているケースです。
具体的に言えば、ADSLがこれに当たります。
「ADSLの実際の速度はどれぐらいなの?」と聞かれた場合、「考えるな、感じろ」と答える他はありません。
無線接続の場合、ベストエフォート値はADSL以上光回線以下というあたりに落ち着くことが多いです。
回線の性格的には同軸ケーブルは無線以上になっていいはずなのですが、すでに述べた理由で遅くなります。
さて、以上を数値で現した場合ですが、光回線の場合条件が良ければカタログ値の7割程度、無線の場合は5割程度が出ると言われています。
本当の回線速度は使用環境次第
インターネットへの接続速度は、回線の状態だけで決まるわけではありません。
インターネットへ接続する手前の、家庭内LANの段階に速度を最も引き下げる要因が潜んでいることもあります。
身も蓋もない言い方をすると、「豪華な光回線と契約していても、10年前のポンコツパソコンを接続しているのなら、体感速度は一向に上がらない」となります。
パソコンだけでなく、ケーブル・ルーターなど、ネットワークを構成するすべての要素が、速度低下の元凶になる可能性を忍ばせています。
また、特に動画を例に取れば、再生に使用する機器の画面解像度が低いほど、体感の通信速度は向上します。これは実際にはより少ないデータしかやり取りされていないためです。
ベストエフォート型の逆はギャランティ型
・保証した回線速度が出る
ベストエフォート型とは違い、カタログ値通りの通信速度が出ることを保証した回線を「ギャランティ型」と言います。
あまり聞いたことのない言葉だと思いますが、実際に使われることもほとんどありません。
インターネットの通信速度を決定する要因はさまざまなものがあり、特定の通信速度を保証するためには、莫大なコストをかけてさまざまな所に余裕を持たせておかなければならないからです。
ここまでコストがかけられるのは、IT系の大企業や軍事関係など、ごく一部に限られます。
ですから庶民からは縁遠い言葉になっているのです。
GEAR
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